小学5年生からの初志貫徹! 香大医学部 県民医療推薦枠 合格 T君の事例

丸亀高校3年 T君 香川大学医学部・推薦(県民医療推進枠) 合格

 香川大学医学部・推薦(県民医療推進枠)入試は、最近、問題となっている「地方の医師不足」を緩和する目的で作られた、香川大学医学部独自の入試方式です。定員は5名程度と少なく、「香川県医学生修学資金」の貸付けを受けることが義務付けられ、将来、香川県が定める公立病院等で一定期間(9年間)医師の業務に従事すれば、その返済が免除されるという特典もあり、非常に人気が高くなっています。

 入試は、センター試験の結果、小論文2本、チームディスカッション、県の面接によって合否が判定されるという、これも複雑でハードルが高い方式が採られています。

 T君とは小学校6年以来の長い付き合いです。中学、高校の合格を一緒に喜び、気がつけば、大学受験生になっていました。彼は中学生の頃から医者になりたいという目標を持っていました。それが具体化したのが、彼が高1の時のU先生(丸高OBで香川医科大学の手術部長)の講演だったと聞きました。実はU先生は私の高校時代の生徒会仲間で、「サマーレスキュー~天空の診療所~」のモデルにもなった男です。その名前を聞いた時、不思議な縁を感じてしまいました。「医療環境の整っていない地域での総合医」になり三俣診療所の活動に参加したいという目標は、それ以来、彼の中でより現実的なものとなっていったということでした。

 彼から香川大学医学部・推薦(県民医療推進枠)という意志を聞いた7月頃から、ハードルを一つ一つクリアしていくというスケジュールを一緒に考えていきました。

 まず、志望理由書については、今の「高齢者医療」、「医師不足」の現状をしっかり把握し、それを踏まえて、自分は何がしたいのかをしっかりと文章に込めること、というアドバイスをしました。決して流麗ではないけれど、彼らしさが伝わってくる、いい理由書が出来上がりました。

 次の課題は小論文です。これがかなり厄介です。一つ目は英文を読解し、それに日本語で答えるもの。主に医療系のテーマについての設問です。彼とは医療に関する知識を補充するため、医療の将来について、いろいろな話をしました。ものすごいスピードで進行している高齢社会のこと、研修制度が義務化されたことによる地方の医師不足が深刻化していること、医療がより専門化され、分化される傾向があること、それを連携して、継続した医療を目指していること等。その中で彼の医療に対するひたむきな姿勢に彼らしさを感じることがしばしばありました。それを文章化していく中で、飾り気はないけれど、彼らしさが伝わる文章が書けるようになったと思います。

二つ目は化学分野、物理分野、生物分野からテーマが選ばれ、それに対する数理的思考を問われる設問です。受験科目に物理、化学を選択している彼にとっては、生物分野の出題に対する不安感があったようですが、本番試験では、不安が的中し、生物分野の出題でしたが、彼をずっと見ている私にとっては、ある意味ラッキーだったと感じました。きっと逆に彼さしさが出る、きっと大学の先生方はそれを見抜いてくれると思ったからです。

 そして、面接試験。よく面接シュミレーションを繰り返し、「立板に水」を流すような答えをする人がいますが、医学部の面接では、決してそれがプラスになるとは限らないと思っています。彼には想定外の質問をいくつか投げかけ、それに対する反応をみていきました。医療の世界でマニュアル通りにいかないことが当たり前なのですから、それに臨機応変に対応することが要求されるのは、いうまでもありません。最初は戸惑ったようですが、次第に自分自身の答えを自分自身の言葉で、なおかつ彼らしい表情で答えられるようになりました。

チームディスカッションについても、個人面接と同様、マニュアル化されていない、自分の言葉でしゃべること、常にリーダーシップを取っていく必要はないこと、というアドバイスをしました。今の医療のテーマの一つである「チーム医療」は、決してワンマン的な医師を求めている訳ではないからです。試験の後、「最初の課題では、少しとまどったけど、しっかりと聞きました。自分がリーダーになった時には、しっかりと自分の考えを言うことができました。」という報告を聞き、「もしかして…」という気がしました。

 T君、本当におめでとう。白衣を着て医療環境の整っていない地域で走り回る、君の10年後を楽しみにしています。